「IDOBATA!」ー育児期夫婦のズレ(2/22)/開催レポート
2月22日(月)IDOBATA!「育児期夫婦のズレ」を開催しました。風邪の季節ということもあり、キャンセルが予想以上に出て少人数での開催となりましたが、赤ちゃんたちも一緒にのんびりじっくりお話ができました。
今回お題にしたのはこちらのサイボウズが公開して話題になった
ワークスタイルドラマ「声」
でした。4話5話の夫側妻側の裏返しシーンが印象的です。
「いろいろな視点」に気づくチャンス〜ズレの俯瞰
まずはざっくばらんにどんなことを感じたか、からスタート。
『男性視点が理解はできた』
『男性の側のあの悲しさ(おもちゃを迷惑そうに言われる)はわかるけれど、受け入れる気持ちになるのが難しい』
『あれで(家事を)「やっている」って言われても……』
『同僚が時短で先に帰るときに「いいなぁ」と自分も思っていた(子どもがいない頃)』
ムービーに、あちこちからの視点がうまく盛り込まれているので、自然にそんな感想が出ます。こっちからこう見える、というのがわかりやすい。ただ、それを素直に受け入れるのは難しい、という正直な気持ちも出てきました。
『なんだか住んでる世界が男性と女性で違う感じがした』
そう、正に同じ家の中にいて同じ空気を吸っているはずなのに、全く違う世界にいるかのようなふたり、でした。小さな意図のすれ違いがムービーには沢山仕込まれていました。
こんなズレが、ストーリーだけではなく、数字でわかりやすく出ているデータをいくつか狩野からご紹介し、こんな現実が、多くの人に普通に起こっていることを確認しました。
妻と夫はなぜそんなにズレる?
さて、話は「なぜズレるのか……」へ。
ここへきて、鋭い指摘が続きます。
『男性が関わる育児家事に関わる時間が少ない(だから経験則も出来上がらない)』
これはそのまま働き方の問題につながり、「子どもがいるいないに関わらず皆が早く帰れる職場になればいいのに」という声。今まさに大きなムーブメントになりつつある「働き方改革」です。
『役割意識が違う(男「稼がないと」女「時短+家事」になりやすい。)』
『育てられ方が違う(夫実家に行くと男性が動かない現実。女性が当然のように動く!)』
確かに、育った環境には強く影響を受けるものです。性別役割意識も自覚ないうちに環境によって醸成されることが多い。性別役割分業を肯定するか否定するかは人によって違っていいことですが、それが相手だけでなく、意外と根深く自分自身にも刷り込まれている、という自覚は大切です。
「自分の父親のコピーを夫に求めている側面があるかも」という気づきを下さった方も。むしろ、夫が夫の母親のレベルを妻である自分に求めて喧嘩になった経験のある方は多いかもしれません。その逆パターンです。無意識のうちに夫の「最低限ライン」を自分の父親と重ねている……実は結構やっているかもしれませんね。
『互いの立ち位置への想像力が足りないから』
これは非常にシンプルでかつ、最も大切なことかもしれません。それには相手を知ることが、重要です。女性が何かを背負っているように、男性が背負ってしまっているものが何なのか、女性からしたらびっくりするほど「どうでもいいこと」かもしれません。「男のつらさ」を社会的背景から説明している「男性学」の視点にも話が及びました。
どうしたらいいのか?〜解消のアイディア
さて、ではどうしたらこのズレ、解消できるのでしょうか。
出てきたいくつかのアイディアをご紹介します。
育児の負担が自分だけにかかると夫が仕事をできることが「ずるい」「うらやましい」と感じるので、
『「思う存分仕事をできる日」を夫婦別々に設ける』
というものです。家庭のことを気にせず仕事を思い切りやっていい日、家庭のことを自分が通しでマネージする日を双方が持つ、というのは、アンフェア感が下がり、仕事の満足感を上げることもできます。また、双方が「一緒にやらないと成り立たない」というのを実感するいいきっかけになりそうです。
『「女性が時短を取ってまわす」という前提をやめる』
というものも。どうやったらふたりでまわせるかと最初から一緒に考える、というのは当たり前の事のようですが、意外とここ、「妻が時短」を前提にして、夫は保育園の送り程度、で、手が回らなければ外部の手を借りる、という発想になっていないでしょうか。スタート地点を、「ふたりとも今まで通りの働き方はできない」→「足りない時間をどう捻出する?」という発想に立てたら、互いの「当事者度」がぐんと近づきそうです。
実際には、男性側が「やらされ感」があるままいくら関わったとしても、女性の側の気持ちのアンフェア感や距離感は、消えないものです。どんな手法を試すときも、「一緒にやること」に気持ちの上での納得感や切実感が共有きているかが大切なポイントになってくると思います。
育休中の方にとっては復帰してからの子どもの体調不良は今から心配の種です。そこへ
『保育園から連絡が入る先を夫にする』
というアイディアも。「第一発見者、夫化」と勝手に名付けてみましたが、当事者意識云々を越えて、「当事者」になってもらう。連絡が入ってどうするか(自分が動くか妻に頼むか)を判断する気の重さをシェアできるチャンスになるかもしれません。
「男性はいつまでも子どもというイメージ」「会社の新人レベルだと思って伝える」「最初から夫がいないものとして家庭の中が回るようにする」という声もありました。実際そうして乗り切っている先輩からアドバイスを受けることも多いでしょう。これらは一見「サバサバ」したソリューションのように見えるかもしれませんが、女性がいろいろ試して疲れ切ってそこに至った過程を想うと、むしろ、強い諦めとそれに伴う痛みを感じます。「夫がいないもの」と割り切ると、自分の気持ちの落とし所はつくけれど、それは「愛情曲線」という意味では下降につながる……という重い指摘もありました。
もし、「フェアでイーブンに」という視点に立ちそこを目指すならば、「夫は教育するもの/いないと思え」と言い切るサバサバソリューションを、手法として取り入れるのは少し気をつけた方がよいでしょう。自ら家事育児を自分の方が上と定め(現実がそうだとしても)、見下ろす限り、相手にとって強烈な敗北感と逆アンフェア感を生み出し、悪循環に陥る可能性があります。
それぞれの志向と落としどころ〜解決策は一様ではない
今回は、育休中か仕事をしている皆さんで、仕事を持つ女性視点での話が中心になりましたが、性別役割意識について聞いてみると、三者三様にそれぞれ異なる志向でした。自分とパートナーの性別役割に対する志向や仕事のある/なし、仕事の状況、また、子どもの状況によっても、「ふたりで一緒にやる」の基準も快適な落としどころも大きく異なるものです。
夫婦が一緒に快適にやっていくところを見つけるための軸となるポイントを、最後に狩野からお話ししました。
育休復帰前に参加できてよかった!/両親学級などでこういう話をしたらいいのに/まだ数ヶ月で実感は少ないけれど参考にしたい/育児の最初の頃を思い出すのが必要かな……等々の感想をいただきました。
今回のお題のムービーのようなズレを素直に両側から見るというのは、当事者にとっては本当は難しいものです。特に日常の自分たち夫婦のこととして見てしまうと、感情が入り混じってなかなか簡単にはいきません。比較的冷静なご意見が多かったのは、実感が強まる前の育休中で育児1年目というの方が多かったせいもあるかもしれませんが、ドラマであることで、ちょっと他人事として自分から引き離せる効果もあったかもしれません。
みなさんご参加ありがとうございました!ぎゅっと濃い時間を共有できたように思います。顔を合わせて話すこと、違う立場や育児フェーズの人同志が一緒に言葉を交わしたことが、それぞれの生活のちょっとしたきっかけになったならうれしいです。
『ふたりは同時に親になる 産後の「ずれ」の処方箋』
猿江商會 ¥1500 +税 ISBN978-4-908260-08-7
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