理想は「気持ちが対等」〜「ママとパパの家事分担〜IDOBATA!」開催レポート

9月30日(金)、高田馬場にて「ママとパパの家事分担〜IDOBATA!」を開催しました。当日はキャンセルありつつも女性おふたり男性おひとりの3人。みなさん0歳代〜2歳代の範囲の育児真っ只中です。ママ視点、パパ視点が混ざり合い、お互い自分のパートナーはどう思っているんだろう、というところに素直な想像力が働く暖かい時間になりました。

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それぞれの課題感

まずはそれぞれの課題感や現状から

「自然にやれる方がやるという感じにまわっているけれど、それでもちょっとイライラしてしまうことがある。」
「言ってもやってくれない。でも専業だから仕方ないと思う。自分からやってくれるものがあるのことはすごくうれしい感じる。」
「一緒にやっている。分担にあれ?っと思ったり、小さいことを言ったり言われたりでイラっとしてしまうことがある。」

なんだか大事件が起きているわけではないのだけれど、ちょっとした小さなやりとりの中に、イラっとしたり心ざわっとする瞬間がある。それが家の中の家事分担には出やすく、それぞれの立ち位置からの微妙な気持ちがでてきました。

そんな「小さな違い」でゴミ箱のゴミ袋問題で大いに盛り上がりました。
このあたりのことは、「ゴミ袋はゴミ箱にいつつけるのか?」のコラムにまとめましたのでぜひご覧ください

産後だからこそ変わったこと

ふたり暮らしの頃と育児を始めてからの家事のちがいについて聞いてみました。

あまり変化ないという方もいれば、大きく変わったという方もいます。育児をしながらではとても思うように家事ができなくなったということだけではなく、夫婦の働き方のバランスが変わったことによる変化が大きいことが見えてきました。共働きから片方が専業になるタイミングやその逆パターン。また、仕事場が家の外なのか家なのか、という空間の違い。育休よりも根本的なステイタスが変わったケースの方が分担バランスに強い影響があるようです。

育児を始めて目指す家事レベルを上げてしまった可能性があるか聞いてみたところ、意外とそういうことではなさそうです。

ただ、「家にいるのが中心の生活になると、それだけで散らかるし汚れるし家事量は増える」とのこと。なるほど、ふたりとも外で仕事をして夜しか家に帰らないような生活だと、たいして散らからない、というのもうなづけます。仕事中心か家中心のライフスタイルの違いが、家事そのものの量や性質を変化させるわけですね。

専業だと偏りやすい問題

専業だと「子どものことで家事に手が回らないのに、夫には『時間あるじゃない?』と思われていそう」という声は、象徴的でした。産後乳幼児期の育児は時間的にも精神的にもまったく余裕がないものです。本当のところ、「できないのが当たり前」なのですが、「家事って簡単にできる」と思われがち。そして自分自身も「専業主婦はみんなやっているから仕方ない」と思いがちです。

なんで大変さは伝わらないのでしょうか。

夜遅くまで外で働く生活と、自宅で仕事をする生活両方の経験がある方は、「外で働いているとわからなかった、家でやってみると大変さがわかる」という実感があるそうです。家の中で何がまわっているのかは、家でひと通りの家事をこなしてみないとなかなかわからないというわけです。

家で「待っている側」も「待たせている側」も、本当はどちらも重さとか面倒さを抱えているものです。……そういう「お互い様」なところが、家の中の役割がくっきり分担タイプの場合は、想像力を働かせにくいようです。

家にいる絶対的な時間量からして、家事の「分量」が家庭専業の側に偏るのは当然かもしれません。でも、大変な状況のときに「できていない」と指摘されるのはつらいもの。こんな場合は、パートナーが状況を理解して「大変だね」「無理しないで」と声をかけられると、うんと気持ちが楽になりそうです。

あまりにもやってくれないと「私が苦手なことだけでもやって欲しい!」というのが率直な気持ちだそう。「もっとやってほしい」よりも「お手上げだから助けて」という表現に変えてみるのもいいかもしれません。

自分はどのタイプ?

さて、家事分担とはいえ、夫婦によって働き方も育児フェーズも違います。分担方法や分担の分量に注目するよりも、自分はどんなふうに「ふたりで家事」をしたいと思っているのかを把握することも大切です。ベースになる考え方を類型化して、4つのタイプを示し、自分の気持ちに近いものを選んでもらいました。その時のスライドの図がこちらです。

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・自分の理想のスタイルはこう
・現実はこの辺
・パートナーはこう思っていると思う

をそれぞれお話してもらいました。

自分はこうしたいけれど、相手はもしかしてこう思っているかも……と、パートナーがどう思っているかは確信が持てない様子。ぜひこれは家で自分のパートナーがどう思っているか聞くきっかけにしようということになりました。自分の理想はこう、と伝えることも大切です。自分の理想と現実が離れていたり、自分の理想とパートナーの理想が大きく離れているとその分ストレスは大きくなります。

家事分担というと表面上の分担内容に目がいきがちですし、具体的な家事分担のスタイルや手法もご紹介しましたが、ベースの「こうありたい」というイメージが共有できているかどうかは、意外と見落としがちな大切なポイントです。

「気持ちは対等」は持ち時間に関係なく実現できる

今回参加されたみなさんは夫婦の働き方もライフスタイルもそれぞれ違います。それでも、「理想」は、この図の右から2番目の「一緒にやりたいー気持ちが対等」というのが概ね共通していました。

そして、これは、共働き育休タイプだろうと、共働き保育園タイプだろうと、専業&外働きタイプだろうと、実は実現できることなのです。家事の分担て、負担する分量だけで測れるものではありません

・相手がやるのが「当たり前」だという気持ちを持たないこと。
・相手の労力に感謝できること。
・相手のやり方を許容できること。

書くと簡単ですが、やるのはなかなか難しい。でも、この原則をパパママ両方がおさえられたら「気持ちは対等」はそれぞれのスタイルの中で成立するはずです。

皆さんからは「他の家と比べすぎてたかも」「やる気をなくさせてしまったかも」「実際のところどう思ってるんだろう……」と相手の気持ちを改めて考える声や、「行き届かなくても指摘しないでほしい」「仮にやり方が違ってもいったん『ありがとう』って言ってほしい」という、自分の気持ちを大切にして欲しいという声が出てきました。どっちも大切な、気持ちですね。

しゃべりながら自分の課題を整理する場

今回はパパもママもいたので、終了してからも雑談の中で、「こういうときはどういう気持ちなんだろう?」「私の場合はこんな気持ち、本当はこう言って欲しいと思っている」……そんな会話も生まれました。

自分のパートナーには照れや意地で言いづらいことが、他人同士だとびっくりするほど素直に話ができたりします。自分の話をしているうちに自分の課題が整理されてくることもあります。「IDOBATA!」でそんな空気が生まれたこと、とてもうれしく思いました。

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最後に、参加者の方の言葉から……
「イクメンていう言葉は好きじゃない。やるのがふつうの『お父さん』でいい。」
「キャリアウーマンていう言葉もおかしい。」
同感です。合わせ鏡のようなこのふたつの言葉、ちゃんと消えていくはず、です!消していくのは、私たち、ですね。

みなさん、ご参加ありがとうございました!

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狩野 さやか

早稲田大学卒。株式会社Studio947のデザイナーとしてウェブやアプリの制作に携わる一方、子育て分野を中心にコラムを執筆。patomatoを運営してワークショップや両親学級講師などを行なっている。著書に「ふたりは同時に親になる 産後の『ずれ』の処方箋」。 → 狩野さやかMAMApicks連載コラム一覧

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1件の返信

  1. 2016-10-09

    […] 思うかもしれません。でも、そんな流儀の違いに小さなイライラをつのらせるのが夫婦の日常だということが、9月30日に開催した「IDOBATA!」のトークからは、はっきりと見えてきました。 […]