日本子ども虐待防止学会で「産後クライシス」と虐待のリスクとの関連性についてお話しました

神戸で開かれた日本子ども虐待防止学会で常葉大学の柴田俊一教授とご一緒した発表が終了しました。「ごく普通の育児」の中にある産後クライシスの構造と、それが虐待のリスクになぜ、どのようにつながるのか、について、12月21日(土)にお話ししてきました。

以下は、「東京すくすく」のウェブサイトで虐待関連を扱った記事のひとつについていた読者コメントからの引用です。

「怒りと言うよりも悲しみ、辛さなんです。/何で私はこんなにも惨めなんだろうと、悲しくなります。/夫は夜勤のため1日半以上一人で見ています。誰にも助けてもらえません。今日も怒鳴り散らし、子どものオモチャを投げました。辛いです。」

子どもに対して怒っているお母さんの怒りが、本当は、子どもに対しての怒りから発生しているのではなく、体と心の疲労の限界を越えたサインであり、自分自身の人生への焦燥感だったり、夫への怒りだったり諦めだったりしていることが、こうしたコメントからわかります。

育児初期の疲労とストレスは、想像以上に大きなもので、夫と妻の激しい環境差が産後クライシスの原因になります。そのあふれたストレスが、他に解決もしくは解消する方法がなかった場合、唯一目の前にいる反撃できない相手(赤ちゃんや幼児)に向かうのは、むしろ必然でしょう。それに加えて、親子(特に赤ちゃんや幼児)の力関係というのは極端な強-弱でバランスが悪く、よほど気をつけなければ、強い親の側は弱い子の側に感情を吐き出す先になってしまいます。論理的な思考でとどまれないほどストレスも親子の密着度も高すぎるのです。ですから、「普通の育児をひとりで行うのは十分危険」、ということを常識にしていかないといけないのだと考えています。

おそらく、この引用したコメントのお母さんの苦しさは、毎日ほんの1−2時間(2−3日に1度でも、1週間に1度でも)子どもから完全に離れられる時間があったら、徐々に解消されます。そしてそれだけで救われる人は実はかなり多いはずです。でも、そんないっけん簡単そうなことを多くのママは実現できていません。

健全な関係を保つためには、ごくシンプルに、母子が離れられる時間を定期的に作ることが大切だということが、常識的に受け止められるようになってほしいと思います。一時保育など外的な環境が整うことも重要ですが、一方で、数日に一度ほんの1時間の完全フリータイムを夫婦間で作るという小さな目標を立てることは今すぐにできるのではないでしょうか。小さな一歩からはじめて行きましょう。

▼発表スライドからの抜粋

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狩野 さやか

早稲田大学卒。株式会社Studio947のデザイナーとしてウェブやアプリの制作に携わる一方、子育て分野を中心にコラムを執筆。patomatoを運営してワークショップや両親学級講師などを行なっている。著書に「ふたりは同時に親になる 産後の『ずれ』の処方箋」。 → 狩野さやかMAMApicks連載コラム一覧

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