「IDOBATA!ー育児期夫婦のズレ/再び!」(3/23)/開催レポート

3月23日(水)、「IDOBATA!〜育児期夫婦のズレ/再び!」を開催しました。今回、お休みもあり、リピーターの方のご参加率が高かったので、ちょっとカジュアルに、より話の成り行き優先で、座談会風に展開してみました。5人中男性2人というバランスで、「夫」の視点も「妻」の視点もバランスよく出てきました。

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直前に参加を決められムービーを見ていない方もいらしたので、お題のサイボウズが公開しているムービー「声」のうち、対になった4、5話のリビングでのシーンだけさっと見ながらスタートです。

夫の負い目?夫も「傷つく」?

ムービーの中で、夫の方がどこか下手に出ている様子に「似ているかも」の声。単純にもともとそういうタイプ、というケースもありますが、男性が実は結構「育児家事に関われていないこと」に引け目や負い目のようなものを感じている場合があります。

それがどこか控えめで遠慮気味な、時に卑屈な雰囲気になって、妻を余計にイラっとさせたり、強弱の悪循環に陥ることがありそうです。

男性も時間を作って積極的に関わる時、スキルが無いないなりに努力して、例えば日々料理を担当したりする。でもそこで明示/非明示的にアウトプット(味や出来)を否定されてしまうと、けっこう傷つく、というリアルな男性の声も。純粋に「傷つく」、という表現は意外と重要です。

この時期のてんぱっている状態の女性は、男性側のそういう「傷つく」とか、「引け目」とか、心の柔らかい動きに思いを寄せられないものです。女性の側が、自分が過去に経験したことのない身体と生活と価値観の大変化にさらされていて、本当に全く余裕がない。一方、男性には産後の女性がそこまで追い詰められているとは想像がつきません。

ムービーの第4話「夫の言い分」では、夫の「作っても文句いうじゃないか」「(返答しないことに)言わせないのは誰だ」という心のつぶやきが続きます。こんな風に男性の「傷ついた気持ち」が反発のこもった表現に転じた途端、コミュニケーションは難しくなりそうです。意外と「傷つく」とか「引け目」とかをストレートに伝えた方が、「そんなふうに思ってたの?」と通じるかもしれません。

俯瞰してみると……

やってもズレてしまう状況を「善意がすれ違う感じ」と表現した方。そうなんです。正に、どっちも頑張っているのに、互いに方向がかみ合わずにエネルギーが負の方向に消費されている感じ、すごくもったいない。

同様に、もっと外側から見た視点も。「互いに疲弊していて、コミュニケーションしたり喧嘩する余裕すらなさそう」。ふたり暮らしで「どっちも忙しいからまぁしょうがないか」と思うのとはだいぶ状況が違うよね、という話になりました。

妻のきもち、夫に通じる?

お題のムービーの5話「妻の言い分」では、かなり「ちゃんと」子どものことを面倒みながら、ところどころで放心したような表情をするところがあります。これわかるなぁ、という声。子どもの相手をして手際よく家事を進めたって、リビングには洗濯物が広がりおもちゃが散らばり、それをケアする間がない……そんなことは当たり前なのですが、吹っ切れないと、理想と現実のギャップに、まともな日常が破綻しているような気持ちになってしまうものです。

一方、夫の側は、家事なんて普通にできるもの、と思いがちです。単なる家事だけでも女性が一人でこなすのは、結構な負担。さらに子どもの面倒を見るということがプラスされて「今までと同じようにできるはずがない」ということにはなかなか気づかないものです。

実際男性からは、妻が専業主婦で自分が100%外で働いていたときは、家事は全部やれて当然だと思っていた、という正直な声も。立場が変わって自分がやるようになって、家事の同時進行マルチタスク感と作業量に驚いた、大変な仕事だ、という気持ちになったそうです。

私の方が!俺だって!の負担合戦

男性が仕事を時間で区切って切り上げて来るのは結構なストレス、という指摘もありました。それに気づいている男性は、実は、女性が時短勤務をしている時の職場への配慮や仕事への物足りなさにも気づいているはずなのです。

なのに、「俺だってこんなにやってる!」「甘い、私はこんなにやってる!」の負担合戦に陥りやすい。

例えば、お互い「家事なんて本当は面倒だよね」というあまり格好良くないダラっとした本音を正直に見せあった上で、「でもそれじゃこの時期乗り切れそうもないよね」と気づいて似たような温度で一緒に軌道修正できたら、気持ちのペースはそろいそうです。

でも、そんな簡単そうなことがびっくりするほど難しい

夫婦だけの問題にしない

正直、このムービーには共感しなかったな、という方の声も。結局仕事も家事も負担を減らすしかないのだから、その足りないリソースや解決を夫に求めないで、他に求めれば、ストレスは夫に向かわない、という考え方でした。そのベースには、夫も自分も機嫌良くしていられるのが最優先、それには、どうしたらいいか、という意識があるそうです。双方の心地よさのために、夫に負担の少ない手段でかつ、ひたすら自分の負担を減らして徹底的に楽をする道を探る……という発想。

少し極端な例かもしれませんが、夫婦の問題に見えることを夫婦という人間ふたり分のリソースで解決しようとしない、という発想は、とても学ぶところがあります。

男性からも「子育てはそもそも核家族(妻ひとり)では難しいのでは」という声がありました。実はこの方は1年育休を取って、ご夫婦ふたりで1年目の子育てをされたご経験があります。はじめのうちは、どこか、育児をもっと楽しめばいいのに、というような気持ちのゆとりがあったものの2-3ヶ月で、これはとんでもなく大変なことだ、と当事者としてリアルに感じたそうです。

育児生活の当事者である男性から出るこうした実感はとても参考になります。女性に比べれば男性の方が「子育ては自分がすべき」という意識を背負っている度合いは低く、より客観的に状況を判定できるはず。その目で見て、「これはひとりじゃ無理」と率直に感じるというわけです。

話題は「冷めた愛情」の方向へ…

話は「産後クライシス」の特徴でもある「愛情が下がってしまった状態」に発展しました。回復の道筋は?離婚する/しないって何が境目なんだろう……そんなディープなところにも。詳細はレポートしませんが、「夫婦」について印象的だったキーワードをいくつか。

「夫は自分にとって最高の友人」
「この人が(と)子どもを育てたら面白そう/楽しそうと感じる」

夫婦って、そんなふうに、お互いに相手への興味のようなものが、ベースにある、あったよね、ということ。いろいろ頭にくるしくやしいけれど尊敬もしている、というような、諦めるとか諦めないとか、そういう次元じゃないところに、何か強いつながりがありそうです。

まるで方法論のように「夫に期待しない」というような強いテイストの語りが聞こえてくると、そういう方向に自分ひとりで頑張ってしまいがちですが、見る方向、頑張る方向を変えることで、何か変化が起きるかもしれません。

以上、よりフランクな雰囲気で、かつ、じっくりそれぞれの視点を交わし合えたように思います。
今回写真はなしですが、集まっていただいた皆さん、ありがとうございました!

皆さんの声が記事として多くの方に届きますように……。

4/9追記
このイベントがマイナビニュースさんで記事になりました。
[マイナビニュース]
家事・育児は”夫”ではなく”外部の力”を借りたい理由 – 共働き男女の座談会
当日取材に来てくださった方にも一緒に参加して話の輪に入っていただいてしまいました。
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狩野 さやか

早稲田大学卒。株式会社Studio947のデザイナーとしてウェブやアプリの制作に携わる一方、子育て分野を中心にコラムを執筆。patomatoを運営してワークショップや両親学級講師などを行なっている。著書に「ふたりは同時に親になる 産後の『ずれ』の処方箋」。 → 狩野さやかMAMApicks連載コラム一覧

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